2016年03月29日

春と肝・胆④ 肝とストレス、詰まり感

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アジサイも芽吹いてきました。

前回は、『肝』は蔵血の役割を持つ、
血の供給センターであることを紹介しました。

今回は、
『肝』はストレスにも関連があることを紹介します。

まず、
『肝』は疏泄(そせつ)を主(つかさど)る
という働きがあります。

「疏」には、通じる、流すという意味があり、
ここでは、精神や情緒の開放、物質の分解や解毒、詰まりを解消することを指します。

「泄」には、排泄させるという意味があり、
ここでは処理排泄を指します。

「疏泄」とは、身体の隅々まで気血を巡らせることです。
疏泄機能が順調であれば、「脾」や「胃」の消化吸収や、
胆汁の分泌、腸への排出を促進させます。

この疏泄機能が失調すると、
お腹の調子も崩れ(腹痛や下痢)、
脳にも血液供給がされなくなり、気持ちにも影響を与えます。
女性においては、月経への影響にも強くかかわってもいます。

逆に、緊張するとつまる感じや、お腹が緩くなるということもあるように、
気持ちが疏泄機能に影響し、『肝』にまでその影響が行くこともあるのです。

疏泄の失調による、詰まり感、これがストレスの元とも考えられるんです。

「疏泄」、初めて聞く言葉だと思いますが、
これを機に、心にとどめて、ふとした時に、
「あ、これ、疏泄がうまくいってないのかな~」
と自分の身体と向き合ってもらえれば幸いです。  

Posted by 是梵治療処 at 09:31Comments(0)東洋医学

2016年03月23日

春と肝・胆③ 肝と血

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チューリップ、もう少しで咲きそうです。

春になると出てくる症状が『肝』と関連があると言われてもピンと来ないこともあるかと思います。

東洋医学においての五臓六腑は、
現代医学でいう内臓とは異なり、
人体という生命体の現象をも含む機能複合体、
実際の臓器のはたらきを超えた概念でとらえています。

東洋医学における『肝』の生理はどうなのか、
どのような現象と関連があるのかを知っておけば、
ちょっと調子を崩した時でも、
「ひょっとして『肝』の影響なんじゃないかな」
「ちょっと『肝』を休めてあげよう」
と、養生の一つのきっかけにもなるかと思っています。

まず、一番のメインの機能は、

【『肝』は血を蔵する(蔵血)】(黄帝内経霊枢 本神篇)

血を貯めておく機能で、現代医学においても通ずるところがあります。
ここでいう「蔵血」には、
血を貯めておこくとはもちろん、
血量の調節もしていると考えられます。
血の供給センターのようなものです。
人体の活動時には需要に応じて血を送り、
安静休息時には血は『肝』に戻り貯蔵されます。

肝に血が蔵されない(肝不蔵血)と、
鼻血、喀血、月経過多、崩漏(ほうろう:不正性器出血)
などの出血症状が出てくることがあります。

また、五行との関係において、
『肝』が属する「木」のグループには、
身体の部位としては、「筋」、「目」、「爪」があります。

【『肝』は筋を主(つかさど)る】(黄帝内経素問 宣明五気篇)
『肝』は「筋」と相互に関連している

【『肝』の合は筋なり。其の栄は爪なり】(黄帝内経素問 五蔵生成篇)
『肝』は「筋」に配当され(体内と体外の相互の関連)、
体外の色沢は爪に現れる。

【『肝』は目に通じ、『肝』和すれば則ち目能く五色を弁ず】(黄帝内経霊枢 脈度篇)
『肝』気は目に通じているので、『肝』の機能が調和していれば、
五色を見分けることができます。

【目は『肝』の官なり】(黄帝内経霊枢 五閲五使篇)
目は各々決まった『肝』の機能である

などなどといった記述があります。

ですから、『肝』は、
日中の活動している間、全身、特に「筋」や「目」、「爪」に血を供給しているのです。

血が
「筋」へ正常に供給されないと、
しびれ感、けいれん、ひきつけ、屈伸運動の障害などの症状が、

「目」に正常に供給されないと、
充血、目のかすみ、乾燥、めまいなどの症状が、

「爪」に正常に供給されないと、
爪の変形、爪床部の色がたんぱく、などの症状が出てくることがあります。

もちろん、逆もしかりです。
夜に「目」や「筋」を使っていいると、そこにある血が『肝』に戻れなくて、
眠れなかったり、寝てもすぐに目が覚めちゃう、足がつるってことになってしまうんです。
夜は身体をいたわることが大切です。
自戒の念を込めて。

今回は、蔵血について紹介しました。
まだまだ続きます。。。

参考
(現代語訳 黄帝内経素問 東洋学術出版社)
(現代語訳 黄帝内経霊枢 東洋学術出版社)

内容の誤りや誤解を招く表現にお気づきの方は温かくご指摘ください。  

Posted by 是梵治療処 at 06:57Comments(0)東洋医学

2016年03月20日

春分から小満(5月20日)までの気候と身体

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昨年植えたミントが冬を越して出てきました。

五運六気学説、
1年を六期に分けて気象と身体の関係を予測し治療に役立てようとする学説です。

今年、丙申の年の一期目は立春から春分まで、
二期目は、
この春分(3月20日)から小満(5月20日)までの期間です。

古典『黄帝内経素問 六元正紀大論篇第七十一』にはこうあります。

気候は、
湿に熱がのりかかって熱がこもり、あたりが白くかすみ、
雨雲が北空に集まり、風が吹いても湿気を吹き飛ばすほどでもなく、
静かに雨がふります。


人々は、
安泰ではありますが、もし、病にかかるとすれば、
熱が上にこもるので、その症状としては、
咳がこみ上げる、気が逆上する(めまい、動悸、イライラ)、
吐き気がし、内から腫れものを生じ(口内炎など)、
胸のつまりや、喉が通じにくくなり、
頭痛や発熱、心臓がもやもやして悶える、
意識がかすんでぼんやりする、
膿のたまるできものができたりします。


とあります。

ココロ穏やかに春ののびやかな気候に順応していれば、
安泰だと言っています。
5月病にも注意が必要です。

参考
「運気」 新釈・小曾戸丈文 谷口書店
「現代語訳 黄帝内経素問」 東洋学術出版社  

Posted by 是梵治療処 at 06:55Comments(0)暦と身体

2016年03月18日

春分と陰陽

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3月20日(日)は春分です。
日曜ですが是梵治療処は開いております。
翌日、月曜日は”1”の日のため休診日となっております。

この春分を境に夏至まで夜が短くなっていきます。
1日の気温差も落ち着き始めてきます。
本格的に温かくなるほうへ向かっていきます。

東洋医学の考え方において、
自然界すべてを二元論で観察する陰陽論が基本になっています。
例えば、
天と地、男と女、太陽と月などなど。。。

この春分においては、
昼が「陽」、夜が「陰」
温かいは「陽」、肌寒いは「陰」
となっており、昼夜、寒暖を等分する時期でもあります。
まさに「陰」と「陽」のバランスが大事になってきます。

身体においては、
上半身が「陽」、下半身が「陰」
背中側が「陽」、お腹側が「陰」
体表が「陽」、体内が「陰」
六腑(胆のう、小腸、胃、大腸、膀胱)が「陽」、五臓(肝、心、脾、肺、腎)が「陰」
身体の外的運動(スポーツ、運動)が「陽」、身体の内的運動(消化、循環)が「陰」、
などなど。。。
このように陰陽の性格を帯びたものが、
お互いに影響し合って調和を保ち、生理機能を維持しています。

で、重要なのは、
陰と陽は、固定して釣り合っているのではなく、
常に流動的に動き、お互いに影響を与え合っているといるということです。
季節を例にとると、
夏は「陽」、冬は「陰」というのはイメージできると思いますが、
春はどうかというと、
春は冬至の時に「陰」がMAXになった状態から少しずつ「陽」が入り込んでくる「陰中の陽」という状態、
これが春分を境に「陰」と「陽」の分量が等分になり、
夏至に向かいながら「陽中の陰」という状態になってくるのです。

ですから、この時期は
自然界の法則にしたがって、バランスを重視することが大切です。
食べたら出す、
じっとしていた分動く、
のぼせる感じがあれば下半身を温める、
などなど、
普段の生活に少しでもバランスをとることを意識するだけでも、
充分な養生になるかと思います。

是梵治療処では、
陰陽のバランスの調和を助ける鍼灸もあります。
お気軽にご相談ください。  

Posted by 是梵治療処 at 06:22Comments(0)暦と身体

2016年03月15日

春と肝・胆② 肝は将軍の官

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前回の続きです。

『肝』は、

将軍の官にして謀慮を出す胼なり。


とあります。

『肝』は将軍であるとあります。
当時の中国において、
将軍は、自らが仕える君主(国を統治している王)から
戦争における全権を委任された存在であり、
現場の最高責任者です。
君主の命を遂行するために、
常に堂々と冷静に構え、何があってもその考えは適切で、
多数の兵からなる軍隊を思いのままに動かすことが重要です。

そして、
「謀慮を出す」
謀慮(ぼうりょ)とは、”はかりごと”のことで、
いろんなことを計画して、ああしよう、こうしよう、
命令を下す、指揮系統のようなものです。
適切な命令を出すためには、現在の状況がどうなのかを判断する必要もあります。
五臓のところでも紹介した、
『肝』に宿る「魂(こん)」がまさにこれです。

まさに、『肝』は
身体の内外の問題を素早く判断し、
早期の対応を行うための命令を下し、
心身ともに健全を保てるようにしているのです。

だから、将軍に元気がなく、謀慮がしっかりしていないと、
『肝』特有の症状が出てきてしまうのです。
(やる気が出ない、目が疲れる、爪の異常、肩こり、筋のつっぱり、イライラ、頭痛など)

『肝』特有の症状は、
『肝』の生理機能と関連がありますので、
何回かに分けて紹介していこうと思います。  

Posted by 是梵治療処 at 07:21Comments(0)東洋医学

2016年03月13日

春と肝・胆① 肝とは

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先日の記事において、
春はデトックスをする時期で、
肝臓に負担がかかることを書きました。


東洋医学の考え方の一つでもある、
五行理論においても、春と肝臓は関連があるのです。
【『肝』は春を主(つかさど)る】(黄帝内経素問 蔵気法時論篇)
『肝』はあるに盛んになります。
とあります。

春に起こりやすい症状も、意外に「肝」が関わっていることもあるのです。
そこで、東洋医学において、「肝」とはどういうものなのか、
その生理機能や役割などを少しずつ紹介していこうと思っています。

現代医学とは全く異なる捉え方ですが、
少しでも養生に役立てることができれば幸いです。

『鍼灸重宝記』という、江戸時代に書かれた本には、こうあります。

肝の臓はおもさ四斤四両背の第九椎に附、
その胼、右の脇右腎の前にあり、
其治左にあり、
其色青くして形木の葉のごとし、
凡て七葉、左の脇に垂ること三葉、
右の脇にたるること四葉なり。
七つは少陽の数なり、少陽膽経は肝の腑、
五行にては木に属するゆへなり、
其系上、肺を絡ふ出入の口なし、
将軍の官にして謀慮を出す胼なり。


肝の臓の重さや場所が書いてあります。
「背の第九椎に附」
背骨の9番目のところが「肝」に相当するとあります。
臨床においてもこの辺りに反応があると、
肝臓に問題があるのかな、と診るところでもあります。

「その治左にあり」
肝臓は身体の右にあります。
でも、その治療は左と書かれています。
これには色々な解釈があります。

左側に症状として出やすいということもあります。

肝門脈という、消化管から吸収した栄養成分や
代謝産物などを肝臓で処理するために肝臓に運ぶ特別の輸送路が
左方向に向いているという解釈もあります。

お腹で五臓の状態を診る腹診において、
おへその左側で肝の状態を診るということもあります。

方位において、南を上にして考えるので、
東に対応する肝は、左側になるということも考えられます。
(方位との関連についてはいずれ説明します。)

まあ、左でやってくださいと書いてあるわけです。

「青くして云々、左に三葉、右に四葉~」
というのは省略します。
上の写真の通りです。

五行においては「木」に属しているとあります。
「木」のグループでは、
人体における臓は「肝」で腑は「胆(胆のう)」があります。
臓と腑については、以前の記事を参照してください。

ちょっと長くなったので
「将軍の官にして謀慮(ぼうりょ)を出す胼(へん?)なり。」
は次回にします。

参考
(現代語訳 黄帝内経素問 東洋学術出版社)
(解説 鍼灸重宝記 医道の日本社)

内容の誤りや誤解を招く表現にお気づきの方は温かくご指摘ください。  

Posted by 是梵治療処 at 06:11Comments(0)東洋医学

2016年03月09日

お知らせ

お知らせです。
15日、来週の火曜日は、
16時受付終了とさせていただきます。
予約状況は、今のところ、
11時~14時までの間が空いております。

13日の日曜日は、
セミナー出席のため、
17時半からとさせていただきます。

ご不便をお掛けしますが、ご了承いただきますようお願いいたします。

また、
来月4月3日(日)は、
イトコーさんが主宰する、
『ヒト・コト・モノ マルシェ』に出店します。
内容は、
置く鍼、さする鍼などを考えています。
12400455_1671037176496175_862213155087855404_n.jpg

これからどんどんお店の紹介とかアップされるようです。

ぜひチェックしてみてください。
http://hitokotomono.jimdo.com/  

Posted by 是梵治療処 at 10:32Comments(0)営業の案内

2016年03月09日

お知らせ

お知らせです。
15日、来週の火曜日は、
16時受付終了とさせていただきます。
予約状況は、今のところ、
11時~14時までの間が空いております。

13日の日曜日は、
セミナー出席のため、
17時半からとさせていただきます。

ご不便をお掛けしますが、ご了承いただきますようお願いいたします。

また、
来月4月3日(日)は、
イトコーさんが主宰する、
『ヒト・コト・モノ マルシェ』に出店します。
内容は、
置く鍼、さする鍼などを考えています。
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これからどんどんお店の紹介とかアップされるようです。

ぜひチェックしてみてください。
http://hitokotomono.jimdo.com/  

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2016年03月08日

春の養生

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暦では、立春から、春となっていますが、
ようやく春らしくなってきました。

庭のチューリップも葉が出てきました。

古典においても、
季節による養生が書かれています。

「黄帝内経素問」の四気調神大論には、
こう書かれています。

『春の三か月は、万物が古いものを推し開いて、新しいものを出す季節であり、

天地間の生気が発動して、ものみなすべてが生き生きと栄えてくる。

人々は少し遅く寝て少し早く起き、庭に出てゆったりと歩き、

髪を解きほぐし、体をのびやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させて、

生まれてきたばかりの万物と同様にするがよい。

ただひたすらにその生長に任せるべきで、殺害してはならない。

ただひたすらにその成長を援助するべきで、剥奪してはならない。

大いに心を励まし、目を楽しませるべきで、体をしいたげてはならない。

これが春に適応し、「生気」を保養する道理である。

もし、この道理に反すると、肝気を損傷し、

夏になって変じて寒性の病を生じ、

人体が持っている夏の盛長の気に適応するという能力を減少させてしまう。』


春はのびやかに活き活きと過ごすのがいいですよ、

春の不養生が、夏に出てきますよ、

と、2000年以上も前から教えてくれているのです。

『現代語訳黄帝内経素問』より抜粋

是梵では、
ココロのびやかに、活き活きとする鍼灸を用意しております。
お気軽にご相談ください。  

Posted by 是梵治療処 at 07:19Comments(0)暦と身体

2016年03月08日

春の養生

IMG_2648.jpg

暦では、立春から、春となっていますが、
ようやく春らしくなってきました。

庭のチューリップも葉が出てきました。

古典においても、
季節による養生が書かれています。

「黄帝内経素問」の四気調神大論には、
こう書かれています。

『春の三か月は、万物が古いものを推し開いて、新しいものを出す季節であり、

天地間の生気が発動して、ものみなすべてが生き生きと栄えてくる。

人々は少し遅く寝て少し早く起き、庭に出てゆったりと歩き、

髪を解きほぐし、体をのびやかにし、心持ちは活き活きと生気を充満させて、

生まれてきたばかりの万物と同様にするがよい。

ただひたすらにその生長に任せるべきで、殺害してはならない。

ただひたすらにその成長を援助するべきで、剥奪してはならない。

大いに心を励まし、目を楽しませるべきで、体をしいたげてはならない。

これが春に適応し、「生気」を保養する道理である。

もし、この道理に反すると、肝気を損傷し、

夏になって変じて寒性の病を生じ、

人体が持っている夏の盛長の気に適応するという能力を減少させてしまう。』


春はのびやかに活き活きと過ごすのがいいですよ、

春の不養生が、夏に出てきますよ、

と、2000年以上も前から教えてくれているのです。

『現代語訳黄帝内経素問』より抜粋

是梵では、
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